English
教授に聞く
> 西堀 正英 教授
西堀先生が所属する家畜育種遺伝学研究室は、ニワトリを中心にさまざまな遺伝学を研究するところだ。ここで行われている先生の中心的な研究は大きく2つ。ニワトリがどういう経緯で野生の鳥からニワトリとなったのかを探る「家畜の家畜化」の研究、そして、食品中に含まれる成分を「家畜か?」という姿勢で調べていく取り組みだ。
「いずれもDNA解析という手法を取っています。前者はドメスティケーションと呼ばれるもので、家畜化の過程を振り返ろうとするもの。後者は、アレルギーや宗教の関係で問題となる、食品中に本来含まれないはずの肉の成分をDNA鑑定で明らかにしようとするものです」と西堀先生。
「ニワトリは家畜の中でいなくなると一番困る動物なんです。その一方で、一番身近でなくなってきた家畜でもあります」。
私たちのまわりにはニワトリ製品が実にたくさんあり、もしもニワトリがいなくなったら、コンビニはやっていけなくなるし、西アジアでは暴動が起こるだろうと先生は言う。実際に、メキシコで鳥インフルエンザの流行から暴動に発展した例もあるそうだ。そうした鳥インフルエンザの大流行もかつては起こっていなかったもの。鳥インフルへの感受性の高さなども、改良の過程でニワトリに何かが起きているからだと先生はにらんでいる。
「ニワトリの家畜化の歴史を明らかにすることで、そうした問題への解決につながったり、育種への応用をはじめとしたさまざまなニワトリ研究に生かしていくことが期待されます」。
また先生は、こうした疫病への対策として庭先で飼われなくなったことが、ニワトリを目にする機会が激減した理由だと指摘。これは後述するもうひとつのニワトリ研究へとつながっていく。
ニワトリは東南アジアを発祥に世界に広がった。それがどんな経路で広がっていったのかという「遺伝子流動」の過程を、1つはDNA情報を使って、もう1つは実際のニワトリを現地で見ることによって、明らかにしていくのが「家畜の家畜化」研究がめざすところだ。
「これを私たちは、『ニワトリ世界征服プロジェクト』と呼んでいます」。
DNA解析というと、もっぱら実験室内で行う研究室が多いなか、先生の研究室では、“本当の姿を見てみる”ことを重視しているため、できるだけ学生を海外などへ連れていき、家畜が実際に生活している様を自分の目で見て、さらにできるだけ自分でサンプルを取って、それを解析するという方法を取っている。
「そうすることで、ものすごく実感があるんですよね。あの時のあの個体をいま解析しているという実感。目の前に実感があるとやる気が出てきますから」と先生。
そして、こうした研究はニワトリだけにとどまらず、豚やラクダ、さらにはサイガという絶滅危惧種にまで応用。イノシシを起源とする豚の研究で沖縄を毎年訪ねたり、サイガの研究ではカザフスタンとの共同研究を行っている。
「サイガというのはカモシカの仲間なんですが、鼻は象のように伸びているマイナーな動物。これが絶滅に瀕しているので、どういう風に残そうかということで研究を行っています。その昔、10万頭くらいいたのが、ある時、2万頭にまで激減したことがあったんですね。これがどうして起こったのか、残っている個体のDNAで親戚関係があるかどうかを調べてみたところ、遺伝的には近くないことが判明。そのまま保全すればよさそうだと分かってきました」。
このほかにも、海洋生物の研究者とともにマンボウについての共同研究を行うなど、その関心は今後もどんどん広がっていきそうだ。
実は西堀先生は、高校生の間でよく知られた存在である。というのも、15年ほど前から某県立高校の相談を受けて、理数科コース向けの取組み「高大連携」をスタートしたほか、10年ほど前からは、日本学術振興会主催の小・中・高校生のためのプログラム「ひらめきときめきサイエンス」や、「夢ナビライブ」(主催FROMPAGE、後援文部科学省)等に参加し、出張講義を行っているからだ。いずれも分かりやすく楽しい講義で人気を博し、こうした活動に関する受賞歴も数多い。
「新しいことを見つけて、自分のやっていることをたくさんの人に伝えるというのが一番楽しいんですよね。だから、いくらでもしゃべります」と相好を崩す西堀先生。
もちろん、こうした活動は、次の人を育てるというのが大学本来の姿であると信じているからでもある。「ひらめきときめきサイエンスでは、学生さんがサイエンスコミュニケーターとなって実験指導などをやってもらっています。高校生にとっては、数年先の自分の姿がそこにある訳で、私がしゃべるよりも身近に感じられるのがいいですよね」。実際に、先生の出張講義やこうしたイベント体験から興味を持って、生物生産学部に入学する学生がすでに何人もあり、現在指導している学生もそのうちのひとりという。「うちでは学生に、学会など人前に出てもらうことを頻繁にやっています。それが奏功して、院生は修了までになにがしかの受賞を1回はするし、就職もすんなり決めていますよ」とうれしそう。
一方、こうした出張講義の際に続けているのが、「ニワトリの絵」を描いてもらうことという。「提出してもらった絵を見てみると、4本足のニワトリが必ず何枚かあるんです。そのほか、日本人は大半がニワトリを左向きに描く、ということも分かってきました」。
先生はこれを講義中のディスカッションのテーマにするほか、もうひとつの研究テーマにもしているという。「対照実験も行いながら、そうした現象を解明しようとしています。参加している子ども達にとってもそれはおもしろいテーマになるし、科学には例外が必ずあるということも学んでもらう訳です」。
調査研究や出張講義であちこちへ飛び回る生活のため、研究動物を飼育することは残念ながらできないが、「ニワトリ先生」と呼ばれながら、広島大学の認知度を高めることに楽しみながら努めている西堀先生。
最後に、若者に向けてのメッセージをもらった。「何事も、好きこそものの上手なれです。いろんなものを好きになってやっていってください。広島大学には、それに応える環境が用意されていますよ!」
西堀 正英 教授
2017年5月19日掲載
教授に聞く
トップページ
生物生産学部
ホームページ
大学院統合生命科学研究科
ホームページ
研究を語る
ホームページ