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教授に聞く
> 鈴木 卓弥 教授
鈴木先生の専門は「食品機能学」。主に、食品の持つ機能性や健康に及ぼす効果、病気を予防する効果などについて研究している。近年の興味の中心は「消化管バリア機能」にあり、なかでも腸管に着目して、腸管の恒常性維持に役立つ食品成分についての研究に意欲的に取り組んでいる。
「消化管というのは、口から肛門に至る食物の通り道のこと。そして、体外と体内を隔てたり、身体の中を仕切ったりするような役割を生体内バリアと呼ぶんですが、その中のひとつである『腸管バリア』が目下の研究の中心です。腸管の中というのは、実は身体の外にあたるんですよ」と先生。
驚くべきことに、人体の構造はいわばちくわのようなものなのだとか。そして、ヒトの腸管の表面積は一般的にテニスコート一枚分ほどもあり、外界との接触面積が広いことから、外界にあたる腸管内から異物が体内に侵入するのを防ぐ「腸管バリア」は、非常に重要な意味を持つという。
腸管バリアが損傷すると、腸管の中にある異物が体内に侵入し、腸管はもとより、血液を介して他の臓器にも炎症を引き起こす。こうしたことから、以前は、異物が体内に侵入することによって起こる腸管バリアの損傷と腸管の疾患のみを研究していたが、最近では、皮膚や腎臓の病気との関連についても調べるようになったそうだ。
先生の研究室では主に、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクス、食物繊維やオリゴ糖といったプレバイオティクスを扱いながら、それらが腸管バリアに及ぼす作用の解明に努めている。
腸管バリアの持つ複数の機構のうち、鈴木先生が特に注目しているのが「タイトジャンクション構造」である。
「タイトジャンクション構造というのは、細胞と細胞の隙間をファスナーのように閉じる機能を持つ接着分子のひとつです。異物はそうした隙間から侵入してバリア機能を損なうということが知られているので、この構造を食品によって増強したり、保護したりする働きを調べているという訳です」。
先生が学生時代に行っていた研究は、腸管におけるカルシウム吸収に関するもの。その過程で、細胞の隙間を通過する吸収をコントロールするタイトジャンクション構造に関わり、さらにその構造が吸収だけでなく、バリアとしても機能していることを知って興味を持ったそうだ。
博士課程修了後、バリア研究を専門的に行う米国テネシー大学に留学し、メーカーでの研究員などを経て、広島大学には2010年に着任。現在では、広島大学インキュベーション研究拠点のひとつである「日本食・発酵食品の革新的研究開発拠点――日本食の機能性開発センター」にも参画している。
先生によれば、食品の健康への作用を研究しているところは国内外に数多くあるが、食品成分と腸管バリアを中心に研究しているところは非常に少ない。そのため、研究成果への評価も高く、複数の学術賞も受賞しているとのこと。
「近年注目を集めている腸管バリアですが、食品成分と腸管バリアの制御についてはまだ不明な点ばかりなんです。非常に身近な食品や食品成分にもまだまだ知られていないことはたくさんある。それらの未知の機能を自分たちの手で明らかにする。それが私たちの研究の醍醐味と言えるのでは」と微笑む。
この研究の目標について、先生は次のように話す。
「食品成分と腸管バリアの関わりを明らかにするのはもちろんですが、現在のところ、腸管バリアを増強したり、保護することによって健康に資する機能性食品というのはまだありません。そこで私たちは、両者の関わりのメカニズムに基づいて、日本初のそうした機能性食品の開発をめざしています」。最終的にはその研究成果を、疾病の予防や健康の増進につなげること。実生活に応用されるその日は、あまり遠くない未来のようだ。
一方で、「研究を楽しめるラボづくり」をめざしているという鈴木先生。充実した研究環境のもと、今後の研究に参加してくれる若者に向けて、このようにメッセージを送る。
「研究は思い通りにいかないことのほうが多い。でも、そんなことも楽しめる姿勢を忘れないで欲しいと思います。広い視野を持って多角的に観察し、思考する力を身につけていくことが大事。また、研究というのは、個人プレーもある反面、多くの場面で同僚や仲間などと一緒に働くチームプレーでもあります。そのため、社会性や協調性は研究者にとって非常に重要な資質であることは間違いありません。研究活動を通して、そうしたことも養いながら成長していって欲しいですね」。
鈴木 卓弥 教授
2016年11月8日掲載
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